シュウ酸気化について


 

一般情報

 

養蜂家にとって大きな課題となっているのが、「ミツバチヘギイタダニ」のコントロールです。大きさ1~2ミリのこの小さなダニは、ミツバチにとって最も危険な敵でなのです。巣房の中でコロニーを形成して繁殖し、ミツバチの体に隠れて体液を吸い、脂肪を減らし、刺すことでウイルス感染を拡大させます。このダニがいると奇形で病気になったハチが現れ、治療しなければコロニーは死ぬ運命にあります。巣箱が1個でも数百個でも、ミツバチヘギイタダニはどこにでもいるのです。

 

ダニをコントロールする方法はいくつかありますが、その中でも急速に普及しているのがシュウ酸昇華・気化法です。これは、粉砂糖に似た結晶性の白色シュウ酸を高温で昇華(固体が液体状態を飛び越えて直ちに気体状態になること)させ、蜂の巣に注入し、巣枠や蜂に付着させる方法です。シュウ酸がダニに影響を与える仕組みはまだわかっていません。しかし、シュウ酸の気化がミツバチヘギイタダニに有効であることは実証されており、正しく使用すればミツバチやハチミツに害を与えません。2週間でハチミツから蒸発し、ハチミツは天然のシュウ酸含有量を取り戻します。シュウ酸は多くの植物に含まれる天然物質ですが、その名が示すように酸であるため無害ではありません。このため取り扱い時、特に処理時には、適切な保護具を着用する必要があります。適切なフィルター付きマスク(適切な呼吸器は、少なくともガスフィルター3M60923を備えたフルフェイスマスクです)、耐薬品性の手袋を着用します。肺に入ったシュウ酸の蒸気は、少量でも重大な障害を引き起こす可能性があり、皮膚からも吸収されます。

 

異なる動作原理に基づく気化器があり、価格は数千円から10万円以上まで様々です。いずれも基本原理は同じで、シュウ酸を適温に加熱し、その蒸気を巣箱に噴射する。シュウ酸をどのように気化させるかについては、養蜂家の間でも意見が分かれています。どの程度の温度で、どの程度の量を、どの程度の頻度で散布すればよいのか。私たちの経験に基づき、以下のようにまとめています。

 

シュウ酸(シュウ酸2水和物)の使用量は1~3gですが、1gでは本当に小さな蜂群にしか使えず、大きな蜂群には3gが必要です。一般的には、平均的な蜂群の巣1個あたり2g程度のシュウ酸を気化させるのが良いとされています。

 

シュウ酸は157℃で揮発し始めますが、この温度では揮発が遅く、処理時間が長くなり、気化器内で沈殿する可能性も高くなります。実際には、200~230℃が推奨温度となります。

 

頻度については、養蜂家の間でも意見が分かれるところです。なお、ダニは11~12日間蓋掛けされた巣房に留まるので、その間の処理は巣房内のダニには効果がありません。処理は春と夏の終わりから秋にかけて繰り返し行い、1回の処理サイクルは5~7回程度です。また、越冬前の最終処理として使用することも可能ですが、その場合には越冬中の蜂球が少しばらけた状態になる必要がある為、気温が10℃以上の時が効果的です。ダニ防除・駆除は、単に日常的に行うだけでなく、サンプリングにより蜂群のダニ数を測定し、状況に応じて慎重に処理することが重要です。

獣医師指導のもと適切な処理を行ってください。